こんにちは
FL.OPSの中の人その2、DAO(だお)です。
本日4月4日は、二十四節気の第5番目にあたる「清明」です。
「万物がすがすがしく明るく美しいころ。」ということですが、本日の福岡は冬が戻ってきたかのごとく寒い一日となっております。
お出かけの際は、一枚羽織るものをお持ち下さい。
また本日は、39年前に、かのMicrosoft社が設立された日でもあります。
弊社では今年、Microsoft Partner Network Silver Server Platform を取得致しました。
Windows Azure の運用にも、今まで以上に励んでいく所存ですので、Windows Azure の運用も、弊社にお任せ下さい!
…と、力強くCMしたところで(笑)
第9回の今回は、サービスデリバリの「サービスレベル管理」について、説明させて頂きます。
1.サービスレベル合意書 (Service Level Agreement :SLA)とは
SLAとはITサービス・プロバイダとIT顧客の間の文書化された合意であり、重要なサービス目標値と両当事者の責任を定義しているものです。
つまり、顧客とサービス提供者の間でITサービスの取り決めについて、目標及び責任を明確にし、合意した文書のことです。
また、ITILではSLAの締結に関して、以下のような注意点を記しています。
- SLAは合意する事に重点が置かれなければならず、一方が他方から賠償金を得る手段として使用されるべきではない。
- ITプロバイダと顧客の間で真のパートナシップが育成されるべきであり、その結果として相互利益の合意が達成される。
つまり、SLAはどちらかが不利益になる契約ではなく、お互いがサービス責任範囲や内容について合意する事が重要になります。
また、SLAの合意は両者がサービス内容と責任について充分議論し、お互いが納得した上で合意されなければならず、議論せずにITサービス提供側と顧客の関係で締結された契約ではサービス品質の維持はおろか、サービスの提供さえ危ぶむまれる事態となってしまいます。
2.サービスレベル管理 (Service Level Management :SLM)とは
サービスレベル管理とは、SLAの計画立案・サービス内容の交渉・草案作成・合意・導入・監視・報告までの一連のプロセス指し、ITILの『サービスデリバリ』では以下のように定義してあります。
- 『事業やコストの正当性を踏まえること』とし、サービス提供における事業の採算性を考慮しながらプロセスを実践する事を必須とする。
- 『ITサービスの成果に対する一定周期での合意、監視、報告、および低品質名サービスを取り除く活動の開始を通してITサービスの品質を維持し向上させることである』
例えば、顧客満足獲得のため、顧客の要望以上のサービスを提供した場合どのようになるかを簡単にシミュレートすると…
- 顧客の要望以上の品質でサービスを提供し顧客満足の獲得を図る。
- サービスのレベルを上げた結果、不要なコストが掛かってしまい、採算が合わなくなる。
- 顧客に対して不要なコストを掛けてしまい、満足を得ることができなくなってしまう。
このように、顧客満足を獲得することは難しくなります。
もちろん、不要なコストを顧客に対して請求しなければ、顧客満足を得ることはできますが、それはサービスとして正しい姿とは言えません。
つまり、「良かれ」と思ってサービスレベルを上げても、予算との釣り合いが取れなくなってしまっては本末転倒になってしまうというわけです。
従って、事業の採算性を考慮しながら、SLAの内容を顧客と交渉し合意する事がとても重要となります。
また、ITILでは、サービスレベル管理の必要性及び サービスレベル管理を導入するメリットについて以下の通り説明しております。
≪サービスレベル管理の必要性≫
- 『サービスレベル管理は事業をサポートするために必要とされるITサービスのレベルを判断可能』として、サービスが事業のサポートに値するレベルなのかを判断する為に必要である。
- 『要求されたサービスレベルが達成されているかどうか、および達成されていない場合はなぜかを確認する為の監視を開始できるようにする為に、あらゆる組織において必須である。』
≪サービスレベル管理を導入するメリット≫
- 効果的なサービスレベル管理によって達成されるサービス品質の改善とサービス中断の減少は、最終的に顕著なコスト削減をもたらし得る。
- サービスレベル管理は、ITと顧客の間に定常的なコミュニケーションの場を作り上げ、維持し続ける。
つまり、サービスレベル管理の導入によって、サービス提供側においてはスタッフが障害に費やす時間や労力を削減でき、また、顧客においては、サービス停止による事業の中断が削減できることになります。
あわせてSLMが顧客とサービス提供者とのコミュニケーションの場となり、お互いが信頼できる環境を生み出し、更なるサービスの改善や顧客満足の向上ができます。
3.サービスレベル管理の導入プロセス
サービスレベル管理の一連のプロセスは、PDCAのマネジメントサイクルになります。
計画の主な活動としては「機能の確立」「計画立案」が存在します。
導入の主な活動としては「サービスカタログの作成」「サービスレベル要件の設定」「SLAの起草」「交渉」「SLAの合意」が存在します。
確認の主な活動としては「SLMプロセスのレビュー」や「SLA/OLA(*1)/UC(*2)のレビュー」があり定期的に実施します。
是正の主な活動としては「達成事項の監視」「定期的レポートの作成」「サービスレビューミーティング」「サービス改善プログラム」があります。
- Plan(計画)
- 機能の確立 … 活動する為のリソース(人員や設備、資金)を確保し整備すること。
- 計画立案 … 『SLA体形の立案』や『SLAの草案』を作成すること。
- Do(導入)
- サービスカタログの作成 … 提供されている全サービスの特徴の要約やサービスを提供する人員の構成などをサービス全体が一目で分かるドキュメントであるサービスカタログの作成を実施すること。
- サービスレベル要件の設定 … 顧客のニーズを反映させたサービス実施要件を設定すること。
- SLAの起草 … SLAの文案を作ること。
- 交渉 … お互いの利益をもたらす為に議論し、SLAを決めていくこと。
- SLAの同意 … SLAを決定することでSLMの要であり、ITILの核となります。
- Check(確認)
- Act(是正)
- 達成事項の監視 … SLAに基づくサービスの提供がなされているかを監視し、サービス達成報告や運用レポートの作成SLAの違反が発生した際の例外レポートの作成を行うこと。
- 定期的レポートの作成 … サービス改善の為に着手した結果やSLAの目標値に対するパフォーマンスの結果を作成すること。
- サービスレビューミーティング … 定期的に顧客を交え開催しサービス成果をレビューし、何らかの問題を予見する為に行なう活動のこと。
- サービス改善プログラム(SIP) … 組織において改善したサービスを提供し導入効果を明確に測定する為に組まれた正式なプロジェクトのこと。
(*1)OLA … Operational Level Agreement 運用に関わる内部組織との契約のこと。
(*2)UC … Underpinning Contract 請負契約のこと。
今回は、サービスレベル管理について説明を致しましたが、いかがだったでしょうか。
次回は、サービスデリバリの第3回目として、ITサービス財務管理 について、説明させて頂きます。